グローバルプロジェクトと一口にいっても、様々なパターンが考えられます。今回は、システム開発において「どのフェーズがグローバルなのか」といった観点でパターンを分類し、それぞれの特性とPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)に求められる“振る舞い”について解説しましょう。

パターンA:上流工程がグローバル

 世界各国の拠点で採用しているビジネス標準をシステムと共にある拠点に導入するロールインプロジェクトや、ある拠点で採用している標準を世界共通の標準として展開するロールアウトプロジェクトが該当します。

 主たる目的としては、ガバナンスの強化、在庫等保有資産の可視化、および決算の迅速化などです。従って、PMOとしてプロジェクトをドライブする際は、これらの目的達成のためにビジネス側と合意すべき制約事項が存在することに留意しなければいけません。

 というのも、前述の主たる目的群に共通する考え方は「規格化」だからです。平たくいうと、「現場でやれることを揃える」ということになります。

 従って既存の臨機応変な業務オペレーションに影響をきたす場合もありますし、既存の場当たり的なオペレーションの品質を高める場合もあります。

 いずれにせよこのようなパターンのプロジェクトでは、ビジネス側の期待(何も失わずメリットのみ享受できる)と、現実(既存の臨機応変な業務オペレーションの不可や、業務量の増大)を早期にすり合わせておくことが肝要です。

 そのためPMOとしては、早期に現場部門のリーダやプロジェクト推進者である経営陣といったステークホルダーの巻き込みを行う「ステークホルダーマネジメント」が重要になります。この巻き込みは、後になれば後になるほど難易度が高まりますので、プロジェクトの早い段階からの見極めと活動スタートがポイントになります。

パターンB:下流工程がグローバル

 詳細設計~結合テストまでを発注側とは別の拠点で実施するプロジェクトが該当します。多くはコスト低減を主たる目的としています。まれに“企業お抱え”の拠点を活用して、品質の標準化を図る場合がありますが、この場合グローバルプロジェクトによるギャップが顕在化しない傾向がありますので別扱いとします。

 よくいわれるオフショアプロジェクトがこのパターンになります。

 コスト低減を図る際、最も影響を受けがちなのが品質です。オフショアプロジェクトで予定していたコスト低減部分が、品質の悪さによって相殺されるどころか、むしろコスト超過を招いてしまったというのはよくあるケースです。