日本ローカルのプロジェクトと異なり、グローバルプロジェクトでは、多様な組織・地域・タイムゾーン・文化・言語のバックグラウンドを持つステークホルダーで構成されることがほとんどです。そのような特徴をもつグローバルプロジェクトですから、プロジェクトを進めていくうちに、多くの認識の齟齬(そご)、抜け漏れが発生しやすく、説明工数の増大などが発生し、工数のリカバリーが困難を極めます。

 よって、できる限りコミュニケーションをシンプルかつ認識の齟齬、抜け漏れが発生しないように、トレーサビリティーを確保する仕掛けを作り、お互いの意識を繋げることこそが、グローバルプロジェクト成功の秘訣なのです。

 ある会社でこんなことがあった。

 関西のメーカー系システム会社A社は、親会社からの依頼により、海外支社に日本で新たに導入したあるパッケージシステムの展開するプロジェクト受注した。

 プロジェクトリーダーの矢崎(仮名)は、オフショアを使った開発経験はあるが、ユーザー側が海外メンバーとなるプロジェクトでしかも要件定義からの参画は初めての経験だった。

 オフショア開発で培った経験を生かし、要件定義を開始する前にコミュニケーション計画・ルールを定義し、海外支社側のメンバーとも合意を得た。滑り出しはスムーズに進んだ。

 ところが、ユーザー側とのコミュニケーションは英語かつ、拠点が離れているため、プロジェクトが進むにつれ、ユーザーやメンバー間の認識齟齬や行き違いなどが発生し始め、次第にミスや抜け漏れなどの問題が頻発するようになってきた・・・。

ユースケース、機能、ドキュメントを関連付けよう

 要件定義では、ユーザーからの要求は、ユースケースなどを使って具体化し、ユースケースごとに、必要機能を明確化する作業が中心となります。当たり前のことですが、これらをきちんと整理している現場ほど、ミスが少なく、プロジェクトは円滑に進みます。しかし、グローバルプロジェクトにおいて、これら3つの要素をきちんと整理・管理して、プロジェクト全体で共有出来ている現場は以外と少ないものです。