今回は、日産自動車の課題解決手法「V-up」の概要と特徴を紹介しよう。カルロス・ゴーン氏の命により開発され、2001年に日産自動車で正式に導入されたV-upは、実際に利用する社員からのフィードバックなどを経て、改善が重ねられていった。

 プログラム内容の改善に当たったのは、V-upの開発部隊である。そして現在、大まかには次のようなプログラムとなっている。

 まず、解決すべき課題はどのような内容かを定義して、課題に携わる関係者の間で共有する。この段階を日産の社員は「IDEA」と呼んでいる。

 次の段階は、いよいよ課題解決策の策定と実行である。そのプロセスとして「DECIDE」と「V-FAST」という二つのアプローチが用意されている。どちらで課題解決を図っていくかは、課題の内容や質による。具体的には次のようなものだ。

DECIDEで複雑な課題を解決

 DECIDEで扱う課題は、5~6の複数部門にまたがるような複雑なものだ。期間は1~3カ月が標準的。なかには約半年に及ぶものもある。

 DECIDEは主に5つのステージに分かれている(図1)。

図1●DECIDEのステップと課題解決チームのメンバー構成(資料提供:日産自動車)
図1●DECIDEのステップと課題解決チームのメンバー構成
(資料提供:日産自動車)
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 「改善/革新の方策立案」のステージではさらに、「現状把握」「根本要因の特定」「改善策策定」といった各ステージを進んでいくことになる。後述するV-FASTでも同様のプロセスを踏むが、DECIDEでは現状把握のデータ収集や分析、さらに複数回の討議を重ねて、これらのステージを進んでいく。

 課題解決チームの編成は、課題の設定者であり課題の結果責任者である「Vリーダー」、課題解決の執行責任者である「Vパイロット」、そしてVパイロットともに行動する複数の「クルー」、さらにはV-upに熟練したアドバイザー的役割の「Vエキスパート」が加わる。また、「バリデータ」という効果確認者が効果の評価を行う。

 課題解決メンバーは、週に一度など定期的に集まり討議をする。またその間には、「お客さまの声(VOC:Voice Of Customer)」などの必要なデータを集めるといった“宿題”にも取り組む。