システム開発案件で、あるITベンダーに「御社に発注するから」と言って、あるいはそう思わせて提案書を提出させ、その提案書を基にRFP(提案依頼書)を作成し、コンペを行って最安値を出した別のベンダーに発注する。事情はどうであれ、ユーザー企業の“人でなしの所業”の中でも、悪質度において最高ランクの不適切な行為である。

 前回の「極言暴論」で、頑なな調達部門のために不適切な行為に手を染めてしまったIT部門の話を書いた(関連記事:ベンダーとIT部門がぶち切れた“仕打ち”の理由)。私としては、この話を通じて「IT部門も利用部門に対して、調達部門と同じことやっている」ことを伝えたかったのだが、そんな当初の意図が吹き飛ぶぐらいベンダー側の読者から大きな反響があった。

 例えばTwitterでは、この記事に対して「自分も同じ目に遭った」「自分の周りでも似た話があった」といったつぶやきが、私が確認できただけでも80件ほどに及んだ。もちろん、この手の話は、入札が義務付けられている公共関係の案件ではよく聞く話だ。ただ、民間の企業の間でも、こうした行為が横行しているのは私にとって想定外だった。

 そこで、今回はこのテーマを深掘りして「暴論」することにする。ユーザー企業がこうしたことをやると、「安物買いの銭失い」となり、プロジェクト失敗のリスクが大きく高まる。だが、そもそも提案という知的成果物をないがしろにし、商談の相手をだまし討ちにする時点で、企業のビジネス行動として失格であり、犯罪的ですらある。

 その意味では、発注するベンダーが決まっているのに、偽装コンペを行って他のベンダーを“当て馬”に使う行為も、ここまで酷くは無いとは言え、ベンダーの知的成果物をないがしろにし、だまし討ちにする点では同じである(関連記事:ITベンダーに「提案料」を支払っていますか)。しかも、問題の根っこは両者とも同じところにあるので、併せて論じてみたい。