佐藤 邦彦 氏
1989年3月神奈川県立商工高等学校卒業、同年4月に山一証券入社。1998年9月松井証券入社。2004年9月にシステム部長。2006年6月取締役に就任し、システム企画部長兼品質管理担当役員。2009年4月に取締役システムグループ担当役員。2010年10月に取締役システムグループ担当役員(開発・運用担当)。2011年5月より現職。
(写真:陶山 勉)

 私は当社に入る前、山一証券にいた。「証券業界を一度破壊する。営業担当者がいない新しい証券会社を作る」という松井道夫社長の考えに共感して入社した。

 その後、社長が掲げたオンライン専業のビジネスモデルは定着したが、今はそのモデルを破壊する“第2の破壊”を実行中だ。そう簡単には行かないが、それなりの準備はしてきた。

 例えば、2013年1月に始めた新サービスに「一日信用取引」がある。当日中に売買取引を完了する場合に、信用取引の手数料を0円とするもの。金利も1取引注文当たり300万円以上は無料になる。

 実は、このサービスでは顧客が増えれば増えるほど、当社にとっては赤字が膨らむ。投資家が負担する手数料が0円である一方で、当社が証券取引所に支払う場口銭(ばこうせん)は取引量に比例してかかるからだ。システムコストもかかる。

 こんな“赤字垂れ流し”の施策に打って出たのは、現状に対する危機感からだ。新規参入が相次ぎ手数料引き下げ競争も激しくなっており、このまま過当競争が続けば利益を出すのは難しくなる。「手数料0円」という先手を打つことで、競合の脱落を誘い消耗戦を終わらせようというわけだ。

 もっと言うと、「一日信用取引」は当日売買(デイトレーディング)をする投資家(デイトレーダー)に当社を選んでもらうための施策だ。