本連載は「コンセプチュアルデータモデリング」(概念データモデリング)手法を紹介するものです。企業のビジネス(対象領域での活動)を構成する「もの」と「こと」に着目し,ものとことの関係をデータ構造として表現する手法です。

 ビジネスのものとことの関係を把握できれば、どこを変えると業務改革につながるかが見え、あるべきものとことの関係が見えてきます。第1回では、そば屋で「顧客から注文を受ける静的モデル」を、第2回では「調理場の中の静的モデル」を、第3回では、静的モデルに登場する主要な「もの」の状態変化を示す動的モデルを、それぞれ描いてきました。

 今回はデータモデルを使って、ビジネスの課題を確認したり、業務改善案を策定したりするやり方を見てみましょう。

 業務改革の基本は、課題を抽出し、改善・改革案を策定、フィージビリティ・スタディを行ったうえで、改善後の新しいビジネスへ移行する計画を策定することです。このときにコンセプチュアルデータモデルを使うと、現状とあるべき姿の構造をしっかり把握して、改革を進められます。

モデルを使って課題を確認する

 オフィス街にあって繁盛しているそば屋が抱えている課題を考えてみましょう。それは昼の繁忙時間帯に超混雑状態になることです。そば屋の店主は「顧客を待たせないで注文されたものを出す」「間違いなく受注して、正しい商品を顧客に提供する」「席が空くのを待っている顧客のために、客の回転率を高める」といったことについて悩みます。

 回転率を高めることは、顧客満足度の向上のみならず、収益向上に直結します。ただし、そのために味の低下やサービスの質が低下してしまえば、中長期的に店の評判を落とすことになりかねません。