本連載は、そば屋の例を使って「コンセプチュアルデータモデリング」(概念データモデリング)手法を紹介していきます。コンセプチュアルデータモデリングは、企業のビジネス(対象領域での活動)を構成する「もの」と「こと」に着目し、「もの」と「こと」の関係をデータ構造として表現します。

 ビジネスの「もの」と「こと」の関係を把握できれば、どこを変えると業務改革につながるかが見え、あるべき「もの」と「こと」の関係が見えてきます。そうすれば、業務改革のシナリオが書け、それを支える情報システムを設計できるようになります。

「もの」状態変化を示す動的モデルを描く

 第1回では、そば屋で「顧客から注文を受ける静的モデル」を描き、第2回では「調理場の中の静的モデル」を考えました。こうした静的モデルに登場する主要な「もの」の状態変化を示す動的モデルを今回描いてみます。

 まず、第1回で描いた「顧客から注文を受ける静的モデル」を再掲します(図1)。この中にある「顧客注文品明細」というデータ(情報)について、その「生成」から「終了」までの流れを示す動的モデルを描いてみましょう。顧客注文品明細の動的モデルは例えば次のようになります(図2)。

図1●静的モデル(顧客の注文)
図1●静的モデル(顧客の注文)
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図2●顧客注文品明細の動的モデル
図2●顧客注文品明細の動的モデル
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 図の中央に左から右へ向かう太い矢印があります。大きな矢印の左側下に「顧客注文品明細」の箱があります。このモデルは顧客注文品明細という「もの」が「生成」し、「終了」するまでの流れを描いています。