無料でサービスを提供しつつ、アプリ内課金で辞書の検索回数を増やせるという、ゲーム風の課金方式で注目を集めた辞書アプリ「大辞泉」。だが、課金率の低さから仕組みを改め、有料化すると発表したことで、再び大きな注目を集めている。その背景からは、実用アプリのビジネスモデルが今なお確立されていない現状が見えてくる。

辞書アプリにフリーミアムの仕組みを導入するチャレンジ

写真1●百科事典アプリ「大辞泉」
写真1●百科事典アプリ「大辞泉」
配信当初、フリーミアムモデルを採用していたが、現在は2000円の有料アプリとなっている。
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 「大辞泉」とは、HMDTという企業がiOS向けに提供している百科事典アプリ(写真1)。同名の辞書を提供している小学館からライセンスを受け、2013年5月に提供開始した(小学館が提供する「デジタル大辞泉」とは別のアプリになる)。

 大辞泉のアプリが公開された当初、大きな注目を集めたのが配布形態だ。辞書アプリの多くは、数百円から数千円程度のダウンロード課金で販売されていることが多い。だがこのアプリは無料で提供され、かつ辞書の内容を閲覧したり検索したりすることも、無料でできる仕組みとなっていた。

 さらに特徴的なのは、課金への結び付け方である。無料で閲覧できるものの、利用回数に制限が設けられており、検索したり、画像を閲覧したりするたびに回数が減少する仕組みとなっていた。減少した利用可能回数は時間が経てば回復するが、課金することで利用可能回数を増やせるほか、一定額を支払うことで利用制限自体を外せる仕組みを採用していたのである。