電子商取引(EC)大手の楽天は、事業拡大に欠かせないサイト分析を担うデータサイエンティストを世界中から探し、韓国出身の女性を抜てきした。楽天でデータサイエンティストを務めるジョン・ヨンズ氏は機械学習や異常値検出の研究で博士号を持つワールドクラスのデータサイエンティストだ。ジョン氏は膨大なデータの中から不正アクセスなど異常の兆候を見つけ出す。巨大ECサイトで日々攻撃にさらされる楽天市場に欠かせない役割を果たしている。

ジョン・ヨンズさん
出身:韓国
楽天技術研究所 データサイエンティスト
(写真:栗原 克己)

 「自分が何をやりたいかより、相手に話を聞くことを最優先する。それが私の信条だ」。楽天でデータサイエンティストを務める韓国出身のジョン・ヨンズ氏はこう言い切る。

 「話を聞くことを最優先」というジョン氏の発言は、「相手からどんな球が来ても、必ず打ち返せる」という自らの専門性に対する自信の表れでもある。ビッグデータ隆盛の中でデータサイエンティストに注目が集まっているが、ジョン氏は統計学を少々かじった「にわかデータサイエンティスト」ではない。機械学習や異常値検出の研究で博士号を持つ、筋金入りの研究者。論文がアカデミック分野で査読付きの国際論文誌に幾度となく採択され、その実力を世界的に認められたワールドクラスのデータサイエンティストだ。

 研究者だからといって、ジョン氏は“象牙の塔”に閉じこもることはない。その行動力は社内でも図抜けている。

 同社には週3日、研究員が開発現場に席を置き、現場社員とコミュニケーションしながら課題を探る「Co-Working制度」と呼ぶ仕組みがある。ところが、ジョン氏は「制度などお構いなし」(楽天執行役員で楽天技術研究所所長の森正弥氏)に、縦横無尽に動く。課題打破のためには労をいとわず、人脈を駆使して現場へ直接話を聞きに行くのだ。