今回の投稿は、ブランク氏のクラスを受講した卒業生との対話シリーズの一つになります。この卒業生が想定していたMVP(minimum viable product)が実は間違いで、見込み顧客との対話を通じて適切なMVPを見つけたという、ピボットの例が示されています。(ITpro)

 自分たちの企業のDNAに「継続的な顧客発見」を組み込んでいる創業者チームは、彼らの投資家よりも賢明であり、より大きな成功する企業を構築できます。

 2013年7月、私の生徒だったアシュインに関するブログをポストしました(関連記事:MVPとは「安価な製品」ではなく、「賢く学ぶこと」です)。ハイパー・スペクトラル・カメラを装備した無人飛行機を農園上に飛行させ、ハイパー・スペクトラル画像を収録するためのシード資金を調達しようとしていました。彼の企業特有のアルゴリズムにより収録画像を処理すると、農作物がどれほど健全であるか、病気や害虫がはびこっているかどうか、肥料が十分か、水が十分かを、農作者に伝えることができるものです(写真1)。

 ちなみに、コンピュータ、GPS(全地球測位システム)、計測手法を統合した農業手法は「プレシジョン・アグリカルチャー」(精密農業手法)と呼ばれています。私はこの分野のスタートアップ企業に、毎年1~2社出会います。

写真1●Ceres Imagingが提供する農地画像のプロトタイプ(写真右)
写真1●Ceres Imagingが提供する農地画像のプロトタイプ(写真右)
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 そのとき私はアシュインに対して、彼の最小機能の販売可能な製品(MVP:minimum viable product)は、農作者に対する「実用的なデータ」(効果的な意思決定に必要な詳細が得られる情報)であって、無人飛行機ではないと伝えました(写真2)。MVPを確認するには、カメラと飛行機またはヘリコプターを借りて、農園の上を飛び、そのデータを処理したものを、農作者が購入するか調べた方が良いでしょう。多分1~2日あればその検証は可能で、想定している資金の1/10でできるでしょうと伝えました。

写真2●Ceres Imagingによる、くるみ園の水分ストレスマップ
写真2●Ceres Imagingによる、くるみ園の水分ストレスマップ
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 それから2~3カ月後、アシュインと私はコーヒーを飲みながら彼の企業(Ceres Imaging)が学んだことを話し合いました。私は、彼が今でも無人飛行機の事業に携わっているか、直近のMVPがどうなったのかに興味がありました。

 私が初めから終わりまで微笑む、素晴らしいミーティングでした。1)アシュインと彼のチームは、事務所の中では分からないことを学び、2)彼らは私よりもっと賢明になったのです。