広告に直接携わらない方でも、最近になって「ネイティブ広告」という語を目にする機会が増えたのではないだろうか。米国のオンライン広告で、バナー広告などのクリック率の減少が下げ止まらない状態にある中、従来の手法に取って代わる新しいインターネット広告手法として、ネイティブ広告が注目されるようになったのは2013年ころから。ただネイティブ広告という仕組み自体は、それほど新しいものではない。

 ネイティブ広告とは、どういうものなのか。一言でいうと「メディアやサービスに自然になじむデザインや機能で表示される広告」である。

 米国でも、2013年12月にIAB(Interactive Advertising Bureau=インターネット広告協会:米国の約300社が加盟し、オンライン広告とインタラクティブ広告を網羅する業界団体。インターネット広告業界団体として強い影響力を持つ)が「The Native Advertising Playbook」と題した白書を公開するまでは、その定義にはやや混乱があった。

 この白書には、ネイティブ広告の定義だけではなく、それを評価するための評価体系、さらに(消費者に対して)広告である旨を明確に知らせるためのやり方など、必要なことが全て網羅されている。例えばネイティブ広告を「インフィード・ユニット(Twitter、Facebookなどで見られる形)」、「有料検索ユニット(Googleなどの検索結果のページで見られる形)」というように6つの種別に分類。それらが媒体による記事やコンテンツではなく、あくまでも有料広告であることを明示するための原則を提示している。この6つの種別ごとに、ネイティブ広告であることを消費者に伝えるために最も一般的な説明も紹介しているという徹底ぶりである。

 ここまで急速に情報が整備された背景には、ネイティブ広告の市場規模がこれから急速に成長してくると見込まれているからだ。米国の調査会社BIA/Kelseyは、2012年のネイティブ広告の市場規模は約16億ドルほどだが、2017年には約3倍の46億ドルほどに跳ね上がるとの予測を公開した。これから先、ソーシャルメディアを活用したコミュニケーション活動を展開していくに当たっても、ネイティブ広告の導入が不可避になってくるかもしれない。

 Facebookはサービスを提供する際のアルゴリズムを頻繁に変更することで知られているが、特に最近ではアルゴリズム変更があるたびに、Facebookページからの投稿の「オーガニックリーチ(広告または他のユーザーのアクションの影響を受けない投稿閲覧数)」が徐々に下がっているらしいと指摘されている。「social@Ogilvy」が106カ国を対象に実施した調査では、特に企業ブランドの運営しているFacebookページのオーガニックリーチは2013年10月ごろを境に激減しているとの報告があった。