本特集「商用化迫る!LTE-Advanced完全解説」では、LTE-Advancedの要素技術としてこれまで、キャリアアグリゲーション(CA)、HetNet向けの干渉低減技術であるeICIC、さらにRelease 12で議論されているスモールセル高度化(Small Cell Enhancement)におけるC/U分離を、各社の実証実験とともに紹介してきた。

 残るLTE-Advancedの大きな要素技術として、MIMO(Multi Input Multi Output)の拡張がある。MIMOは複数の伝送路を使って異なる信号を送受信することで、多重化すればするほど伝送容量を増やせる。LTE-Advancedでは、このMIMOについて様々な拡張が施されている。

 第4回は、そんなMIMOの拡張についてユニークなアプローチを見せた、NTTドコモのLTE-Advanced実証実験を紹介しよう。

1Gビット/秒を実現するには4本のアンテナ構成が必要

 ITUが定義する“本来の4G”である「IMT-Advanced」は、低速移動時に1Gビット/秒という要求条件を掲げている。1Gビット/秒という要件に達するには、キャリアアグリゲーションによって帯域幅を100MHz幅に拡張したとしても、現在一般的な2×2 MIMO構成ではシステムのピーク速度は750Mビット/秒にとどまる。1Gビット/秒というスペックを実現するためには、4×4 MIMOが必要になる。

 ただ端末側のアンテナ構成はタブレットなどはともかく、一般的な端末であればそのサイズから2本のアンテナ構成が限界と言われる。実はこのように送信側が4本のアンテナ、受信側が2本のアンテナ構成であっても、システム全体で考えれば効率的な送信が可能になる。それがマルチユーザーMIMOと呼ばれる技術である(写真1)。

写真1●マルチユーザーMIMOの仕組み
写真1●マルチユーザーMIMOの仕組み
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