AIとBI。アルファベットで一文字違いの古いキーワードが、新たなITトレンドにより華麗なる復活を遂げた。そのITトレンドは言うまでもなく「ビッグデータ」だ。だがAI的な話とBI的な話がごちゃ混ぜに語られることで、AIブームやBIブームの時と同様、“危険な香り”が漂い始めてきている。

 AIはアーティフィシャルインテリジェンス(Artificial Intelligence)の略称で、言うまでもなく人工知能のことだ。1980年代半ばに一大ブームとなった。当時、専門家と同様の判断を可能にしたエキスパートシステムなどが一定の成功を収めたが、それ以上に広がらず、ITの先端分野の表舞台から姿を消していた。ところが最近、膨大なデータの中からコンピュータが知識を自動的に獲得できるようにする機械学習の進歩で、AIはビッグデータ分析の中核技術となり、再び脚光を浴びるようになった。

 一方、BIはビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)のことで、こちらは2000年代半ばにブームとなった。企業が蓄積したデータを分析することで、経営判断や日常のビジネスでの意思決定に役立てようとするものだ。だが当時の日本企業においては、何のためにデータを分析するのかという視点が希薄だったため、多くの試みがあだ花で終わった。それが今、企業が従来収集していたデータ量をはるかに超えるビッグデータを収集・分析できるようになったため、BIの可能性にまた注目が集まるようになった。

 このように見ると、AIとBIは「A」と「B」の違いだけでなく、共通する「I」、つまりインテリジェンスの意味合いも異なることが分かる。英語のIntelligenceには、情報を基に判断する能力である「知能」と、判断を決定付ける「核心的な情報」という二つの意味がある。もちろんAIのインテリジェンスは知能のことであり、BIのほうは核心的な情報のことである。

 つまり、AIにおいては判断を下す主体はコンピュータだが、BIにおいてはあくまでも人間なのだ。さて問題はここからだ。