大手取引所「Mt.Gox」が破綻するなど、仮想通貨「Bitcoin」に関して様々な騒動が勃発した。IT分野に関する調査・助言を行っている米ガートナーは、Bitcoinをどのように見ているのか。同社で金融業界のリサーチを主導しているVP兼ガートナー フェロー デイビッド・ファーロンガー氏に、ガートナー ジャパンを介して話を聞いた。

(聞き手は安井 晴海=日経コンピュータ

――ビットコイン事件については特設ページを参照――

ガートナーはBitcoinをどう評価していたのか。

ガートナー VP兼ガートナー フェロー デイビッド・ファーロンガー氏
ガートナー VP兼ガートナー フェロー デイビッド・ファーロンガー氏
[画像のクリックで拡大表示]

 今回の騒動が発生する前から、ガートナーは代替通貨としてのBitcoinの誇張された評価には、巷間、様々なことが言われていることを「ハイプ・サイクル」(技術とアプリケーションの成熟度・採用率を表したグラフ)を通じて示してきた。このように誇張された評価のベースには、その始まりにまつわる不透明さ、構造および開発における特徴、規制に対するスタンスなどの要因がある。

 もちろん、米FBIに摘発された違法取引サイト「Silk Road」でBitcoinが使われていたことや、Bitcoin相場の大きな変動も影響要因であることは明らかだ。これらの要因のいくつかはすでに沈静化しているが、長期的な観点から見た妥当性・適法性についての課題は依然として残されている。

Bitcoinに代表される仮想通貨は近い将来、世界の金融にどのようなインパクトを与えるのか。

 Bitcoinは、多種多様な資産の評価、取得、価値判断、譲渡に対する新たな選択肢の出現を広く知らせる一連の大きなシグナルの「ノイズ」の一つに過ぎない。

 力の結節(Nexus of Forces:クラウド、ソーシャル、モバイル、インフォメーションの力の強固な結び付き)が発展したことによって、各個人が価値あると考えるモノに値段を付け、取引できるようになった。銀行をはじめとする従来の中間媒体は不要になり、また既存の補完通貨とは異なり個人間で取引を大規模に行うことができる。

 小売の観点から見た場合、デジタルウォレットの発展によって報奨のメカニズムとして成長がさらに促進され、消費者の利用状況に基づいて通貨と支払いの異なるメカニズムの統合が進む。モノのインターネット(IoT:Internet of Things)が形作られていく中で、商取引の未来もシフトし、資産の価値を評価する様々な方法がさらに発展するだろう。

 従来の金融の世界はこのような変化・発展にほとんど関与していないため、金融業界の既存の企業はこれらの社会的・商業的な変革の波に乗る大きな機会を逸することになるだろう。