マネーフォワードは、銀行や証券会社、クレジットカード会社のWebサイトのアカウント情報を登録することで、各口座を一元的に管理できる家計簿サイトを運営する。そのマネーフォワードの浅野千尋取締役CTOは、学生時代から金融分野とITの知識を併せ持つ有名なエンジニアだ。

 天才肌とも言える浅野CTOだが、顧客の声に耳を傾けることに時間をいとわない。顧客の声こそが、強いサービスを生み出す源泉だと考えている。CTOの浅野氏に話を聞いた。


浅野さんは学生時代から金融分野のベンチャーに参加していたとのことですが、詳しくお聞かせください。

写真●マネーフォワードCTOの浅野氏
写真●マネーフォワードCTOの浅野氏
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 大学4年生の時、「カブロボ・コンテスト」という大会に参加しました。株の売買を自動で実施するプログラムを作り、その運用実績で競うものです。そのコンテストは学生主体のプロジェクトだったのですが、法人化することになりました。修士1年生の時にジョインしました。トレード・サイエンスという会社です。

 その会社では、カブロボ・コンテストの参加者が集まって儲かるアルゴリズムを作り、それを基にして、投資信託商品を作りました。アルゴリズムの作者にも報酬を与えるというビジネスモデルで、当時は画期的だったと思います。私はそこでアルゴリズムの責任者を任されていました。

 トレード・サイエンスは、その後マネックスグループになりました。後にマネーフォワードを創業する辻庸介(現在は同社CEO)は当時、マネックス証券に務めていたので、その時に知り合いました。

 自分としては、少人数のベンチャー企業の方が向いているなと思い、2010年に独立してインテリジェント・シープを設立しました。そこでは、機関投資家向けのITコンサルティングをしていました。

 その頃、辻はMBA(経営学修士)の取得のため米国に留学していました。そこで、複数の金融口座を一つに集約させるアカウントアグリゲーションというサービスを知り、帰国した時に日本で同じようなサービスができないかと考えるようになりました。その相談を受けたのが、最初のきっかけです。確か私は「簡単にできますよ」と答えたと思います。

 アカウントアグリゲーションのサービスは、ビジネスとしての広がりを感じました。「個人の、お金にまつわる悩みを全て解消したい」という事業ビジョンにも共感し、マネーフォワードに参加することを決めました。