複数のITベンダーに提案を求め、最も優れた提案を出したベンダーに発注する。ユーザー企業が特定のベンダーにロックインされているのでなければ、こうしたコンペはシステム開発を外注する際の常識である。では、ユーザー企業の皆さんにお聞きするが、提案を採用しなかったベンダーに提案料を支払っているだろうか。

 おそらく「提案はベンダーの営業活動の一環なのに、なぜ我々が不採用の提案に対価を支払う必要があるのか」といぶかる人が大半だろう。実際、私は以前、何人かのCIO(最高情報責任者)やシステム部長にこの質問を投げかけたことがある。やはり、ほぼ全員の反応が「なぜ?」だった。

 だがデザインの世界では、コンペで不採用になったデザインに対しても提案料を支払うケースがある。だから、無条件で提案料は不要と思っているとしたら、そのビジネス感覚はいささかおかしい。

 そんな感覚だと、システム開発案件でコンペを行っても、まともな提案は集まらず、「最近のベンダーの提案力の低下は目に余る」とトンチンカンなことを言って、ベンダーの笑い者になるのがオチだ。

 ユーザー企業のIT部門は日頃、自身の問題解決力の欠如を棚に上げてベンダーに対して「ソリューション(解決策)を提案しろ」と上から目線で言っているはずだ。ソリューション提案を求めるのは、自分たちで解決できないからだ。つまり本物の提案は本来、高付加価値である。「タダで当然」がおかしいことにお気づきになっただろうか。