アラン・ケイは、1972年時点で未来のパーソナルコンピュータDynaBookのプロセッサーについても具体的な考察をしている。単なる端末にとどまらない存在を目指し、プロセッサーとメインメモリーの周辺を慎重に設計する必要があると説いている。必要なハードウエア数や価格については当時に想定できた域を出ていないが、アラン・ケイがDynaBookで実現しようとしていたことを本文から読み取ってほしい。(ITpro編集部)


プロセッサーと記憶装置

アラン・ケイ(2008年11月5日)
アラン・ケイ(2008年11月5日) "no title" by Marcin Wichary is licensed under CC BY 2.0
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 この二つのカテゴリーは、私たちが夢見るコンピューターにおいて、それぞれ最も廉価なコンポーネントと最も高価なコンポーネントを示しています。これら二つを共に扱う理由は、プロセッサーが主記憶容量に大きな影響を与えるためです。

 以下では、今日の技術によって、性能とパッケージ化の要件が両立し得ることを示します(もちろん大目に見てもらう必要もあるでしょう)。HP-35ポケット電子「計算尺」に使われているような、安価なLSIコンポーネントが私たちの夢の有力な救世主です。HP-35は、五つのLSIチップを搭載しています。1チップあたりの平均ではトランジスタ数6000個相当、合計すると3万個相当ものトランジスタを搭載しています。今ではより高密度のチップも実現されています。パッケージ化されたLSIチップの価格は、この2年間で12ドルに次第に近づいているように見えますが、5ドル程度まで急落するかもしれません。

 いまやCPU全体が1チップで実現可能です。現在は1チップ化よりも、プロセッサーが持つべき特性を見極めることが課題になっています。LSIのランダムアクセスメモリーは一般に、1024×1ビットのチップ(700nsサイクルタイム)をビットあたり1セントでパッケージ化したものが利用可能です。4096×1ビットのチップも発表され、1ビットあたり0.35セントでのパッケージ化が可能なようです。8K×16ビットのメモリーなら、およそ460ドルかかる計算です(まだまだ高いものの、勇気づけられる価格です)。

 最新鋭の充電池は、電動ひげそり機やテープレコーダー、電動歯ブラシ、テレビなどの出現によって、かなり進歩してきました。将来は、さらに高性能の充電池を期待できるでしょう。

 現時点でDynaBookが必要とするICチップの予想個数は20個程度なので、電子部品群はうまくパッケージ化できるだろうと考えています。