今回は、ドメインコントローラー(DC)をしばらく停止させた後に再起動させた際などに有効な「プル型レプリケーション」について解説する。また、ログオンスクリプトやグループポリシーに関する情報が収まるSYSVOLの複製における注意点も説明する。

プル型のレプリケーション機能も備える

 前述のレプリケーションの説明では、変更通知を受け取って複製するプッシュ型についてのみ言及した。実はSamba 4にはプッシュ型だけではなく、プル型のレプリケーション機能も実装されている(図4)。

図4●Samba 4の場合のDC間におけるデータ複製
図4●Samba 4の場合のDC間におけるデータ複製
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 プル型レプリケーションでは、DCが周囲のDCにデータ変更が生じていないかどうかを定期的に確認(ポーリング)し、もし変更があれば複製を行う。プッシュ型とプル型のレプリケーションは排他的なものではなく、Samba 4をDCとして起動すると両タイプのレプリケーションが行われる。デフォルトでは、ポーリングの周期は300秒(=5分)である。この値は、設定ファイルを編集することによって変更できる。変更するには、/usr/local/samba/etc/smb.confに次の内容を記せばよい。

[global]
dreplsrv:periodic_startup_interval = 10
dreplsrv:periodic_interval = 600

 パラメーターの「periodic_startup_interval」には、DCを起動してから何秒後にポーリングを開始するかを指定する(単位は秒。この例では10秒)。また、「periodic_interval」には何秒ごとにポーリングを行うかを指定する(単位は秒。この例では600秒=10分)。

 前述した「notify_interval」に大きな値を指定した場合を除けば、プッシュ型だけでほぼリアルタイムに変更が複製されるので、プル型のレプリケーションは不要なように思うかもしれない。しかし、何らかの理由でDCをしばらく停止させた後に再起動させた際、プル型のレプリケーション機能がないと同期(変更の複製)に時間を要することがある。プル型なら停止していたDCが能動的に他DCの変更を確認して最新の情報を入手できる。