スマートフォンをつながりやすくするために、ビッグデータ分析を実践していることが紹介され、以前よりも広く知られるようになりました。実際、ソフトバンク モバイル(東京・港)と我々は一体となり、接続可否データなど毎月10億件のデータを収集・分析し、通信基地局計画の最適化を図っていることで、ソフトバンク モバイルはつながりやすさナンバーワンの座を獲得できている、と自負しています。

Agoop 社長 柴山 和久氏
ソフトバンクグループでGIS(地図情報システム)を活用したデータ分析サービスを手掛けるAgoop(東京・港)の社長。スマートフォンの通話接続率やパケット接続率で1位になったソフトバンクモバイルの活動を支援するデータサイエンティスト集団を率いる。システムエンジニアとしての経験も豊富でITにも精通。(写真撮影:村田 和聡)

 でも全く気は抜けません。スマホの利用者は急増していますから、油断すると「パケ詰まり」現象が増えてしまいます。1回でも「つながりにくい」という体験をした顧客は、契約を継続してくれなくなる可能性が高い。「つながらない。何とかしてほしい」と直接会社に苦情を言ってくれればいいのですが、怖いのは“サイレントクレーマー”。通信品質が悪くなれば、何も言わずに解約し、競合に乗り換えてしまいます。

 こうした事態を防ぐために、スマホ利用者の「つながらない」データを収集し、地図データ上で接続できない場所を特定・分析し、迅速に手を打っています。我々の仕事は、顕在化していない“苦情”を「見える化」することでもあるのです。

新しいデータを入手し分析すべし

 データサイエンティストに求められる大事な仕事は、課題解決に役立ちそうな新しいデータを入手し、分析することだと考えています。やはり社内に蓄積されたデータを分析するだけでは、経営課題を解決するのに限界があります。我々の場合、新しいデータに相当するのが通信可否データと流動性人口データです。