私が所長を務める「情報通信部ビジネスアナリシスセンター」には、自分を含めて9人のデータサイエンティストがいます。私自身はエネルギー分析が専門ですが、メンバーのなかには気象予報士の資格を持つ社員や数理計画に精通した社員、システム開発に詳しい社員らがいます。非常にユニークなメンバーが揃っていると感じています。社内の様々な問題とデータ分析を通じて対峙していくには、メンバーの多様な経験や見識が役立ちます。

大阪ガス 河本 薫(かわもと かおる)氏
1991年京都大学大学院工学研究科修了。同年大阪ガス入社。98年、米国ローレンスバークレー国立研究所に客員研究員として赴任。2001年にビジネスアナリシスセンターに所属。2011年に同センター所長に就任して現職。2005年には大阪大学大学院工学研究科で博士号を取得している。
(写真撮影:北山 宏一)

 一方で、これだけの個性派集団を所長として「どう率いているのか」と聞かれることがあります。大切なのは「自由と規律」のバランスです。決して放任しているわけではありませんが、私はメンバーの柔軟な動きを最大限に尊重しています。

 というのも、データ分析は10人がすれば10通りのやり方があるほど、個々のアプローチ方法や使うツールが異なってきます。これが唯一の正解というものはありません。だから押し付けはよくないのです。

 データサイエンティストは仮説から検証まで個性を存分に発揮できる仕事です。それだけにメンバーの考え方を尊重したいと考えています。

 ですから会議という形式にはこだわりません。オフィスはフリーアドレスで、各自が自由な時間にメンバーと議論したり、数人で集まったりというスタイルを重視しています。個々の柔軟な発想がわき上がり、意見交換からいいソリューション(解決提案)が生まれてくるのが理想なのです。