ITサービスとの親和によって、その人気の秘密を分析されてきたAKB48。ももいろクローバーZには、そうした言説は少なく、むしろサブカル批評によって、その魅力を分析されてきた。ロングテール的と評されたAKB48と、旧来の希少性の経済で語られるももクロの違いを概観する。AKB48はなぜITサービスとの親和を語れるのか? ももクロはなぜそうした議論に加わることがないのか? ヒント探しの入口となる第1回。


2013年10月9日、「ITpro EXPO 2013」に登場したももいろクローバーZ
2013年10月9日、「ITpro EXPO 2013」に登場したももいろクローバーZ
(撮影:岩元直久)
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 2013年、上梓した『ももクロ論―水着と棘のコントラディクション』(実業之日本社/共著・清家竜介)で、わたしは、ももいろクローバーZ(以下、ももクロ)とAKB48(以下、AKB)を比較するために、ITビジネスの観点から読み解くことにページを割いた。

 そうした理由は、わたし自身が『IT批評』(眞人堂)という刊行物の編集長であることより、むしろAKBグループの運営当事者や「AKB言論」ともいうべきものの論者たちが、くりかえしAKBとITサービスとの親和性を述べていたことにある。

 AKBグループの人気を解説するために持ち寄られたタームは、「ロングテール」「オープンソース」「ゲーミフィケーション」といったように、ここ数年にあいだに注目を浴びたIT関連のそれだった。

消費者の潜在的なニーズに訴えるももクロ

 拙著が刊行された矢先、ももクロが日経BP社主催の「ITpro EXPO 2013」に出演した。「AKBでなく、なぜ、ももクロなのか?」と思ったのは、ITビジネスのトレンドから説明しやすいAKB人気に比べ、ももクロ人気はそういう説明を受けつけない部分が多くあるように考えていたからだ。『ももクロ論』には、説明困難な魅力を分析するというテーマがあったからでもある。