本連載では、ビジネス文章力を向上させたい方のために、筆者がこれまで実務の現場で部下や後輩に教えてきたケースを紹介しながら、さまざまな文章スキル不足を「病」にたとえ、それを治療するというコンセプトで、スキルアップの具体的方法について解説します。

第5回の治療は「仕事完了報告不全症候群」の治療です。仕事には、始まりがあり、そして必ず終わり=完了があります。ビジネスパーソンは仕事の中身で評価されるので、この「完了報告」は重要です。「誰かがきっと見ていてくれる」場合もあるでしょうが、自分の仕事上の工夫、成果は必ず自分で報告する必要があります。
目標は何か、成果はどうだったのか、課題が残る事項は何か、今後に生かしたいことは何か。こういう自己分析を含めた成果報告をできることが、重要なのです。しかし、完了報告の本質的意味が分かっていないと、表面的な完了報告になっていまい、結果、上司、上長や関係者から「ダメ」と評価されるのです。
今日の患者さんもそういう状況でした。
◆石黒ユキさん(仮名 25歳女性)の症状◆
芦屋:では次の方、石黒ユキさん、第一診察室でどうぞ。・・・石黒さん?いらしゃいませんか?
石黒:……先生、先からここにいますけど。
芦屋:いやあ、失礼しました。あまりにも気配がなかったので……。
石黒:はい、会社でもそういわれます。存在感がない、いるかいないか分からない。仕事も何をやっているのかさっぱり分からないと言われてまして。同僚や先輩、後輩が私の隣でヒソヒソ噂話をしても、私が隣にいるのに気づかないんです。存在感がないんです。
芦屋:それはお辛いですね。では、仕事で正しく評価されていないとか、そういう症状もありますか?
石黒:そこなんですよね。私は、こう見えても仕事はできる方だと思うんです。大学の成績もよかったし、記憶力も良い方です、国家資格もいくつも持っているし。
芦屋:なるほど。