本連載では、ビジネス文章力を向上させたい方のために、筆者がこれまで実務の現場で部下や後輩に教えてきたケースを紹介しながら、さまざまな文章スキル不足を「病」にたとえ、それを治療するというコンセプトで、スキルアップの具体的方法について解説します。

 第4回の治療は「人動かし力虚弱症」の治療です。仕事は一人ではできません。そこで重要なのが「人を動かす」ことです。しかし、部下ならば命令、指示で動くでしょうが、部下でもない人間を動かすことは簡単ではありません。

 「動きが悪い人をその気にさせて動かす」──これができれば苦労はありませんが、多くの人は、人を上手く動かせないのです。今日の患者さんは、そういう状況でクリニックに来られたのでした。


◆上田メグミさん(仮名 31歳女性)の症状◆

芦屋:次の方は、上田メグミさんですね。今日はどうされましたか?

上田:はい、ちょっと仕事で悩んでまして。今年のはじめくらいなんですけど、仕事内容がかなりかわりまして。どちらかと言うと、それまでは上司から指示されたことをこなす感じだったんですけど……。あ、こういう説明でいいですか?

芦屋:結構です。続けてください。

上田:はい。それで今は、自分で段取りを考えて部下や関係部門に作業を指示してやってもらい、進捗をトレースして仕事を完成させるような仕事が多くなりまして、なんというか、それがあまり上手くいかないというか。人を上手く動かせないということなんですけど……。

芦屋:なるほど。まあ、30歳くらいになると、立場も変わりますよね。多人数をまとめて、プロジェクトリーダーのような立場にある、ということですよね。

上田:はい、その通りです。でも、部下は命令や指示で動いてくれるんですけど、法務部とか、資材部とか、関係部門の人の動きがなかなか。気持ちよく動いてくれないんです。

芦屋:なるほど。よくあることです。