本連載では、ビジネス文章力を向上させたい方のために、筆者がこれまで実務の現場で部下や後輩に教えてきたケースを紹介しながら、さまざまな文章スキル不足を「病」にたとえ、それを治療するというコンセプトで、スキルアップの具体的方法について解説します。

 第3回の治療は「褒め力欠乏症」の治療です。仕事のパフォーマンスをよくするためには、部下や後輩のモチベーションをアップさせることが必要です。その一つの手段が「褒める」ことです。でも、これは少し工夫が必要です。見え見えの「褒め」は相手に不信感を与え、かえって逆効果になるからです。今日の患者さんも、そういう状況でした。


◆大西タイチさん(仮名 30歳男性)の症状◆

芦屋:大西タイチさん、今日はどうされましたか?

大西:はい、私に今年はじめて部下ができたんですけど、その部下への接し方で悩んでおりまして。長い間部下はいなくて、自分が一番下で仕事してきたんです。小さい会社なので……。最近中途で若いのが入りまして、まあ、部下ができたわけですけど。

芦屋:なるほど。今、30歳ですよね。部下の方は何歳ですか?

大西:はい、25歳です。仕事がすごくできるわけでもないんですが、できないわけでもなく。教えれば頑張ってやるけど、長くやる気が続かないようで。

芦屋:なるほど。それで?

大西:もっとモチベーションを上げてほしい、と思ってまして。経営誌を読んでいたら、褒めることが必要だと書いてあって、もう、これは褒めるしかないかと。

芦屋:雑誌ですか?そこには何と書いてありましたか?

大西:はい、まあ、結局よく分からなくて、褒めてみようということで、次に日から褒めるようにしているんですが。

芦屋:上手くいきましたか?

大西:それが、なんか、しらけちゃってるようで。褒めても“寒い”感じがするんです。部下はあまり嬉しそうじゃないし……。だから最近は褒めてません。でも、褒めたいんです。褒めて部下をやる気にさせてみたいんです。

芦屋:大西さん、あのですね。褒めてやる気を出してもらうことをあまり戦略的にやるのはどうかなと思いますよ。人工的でなく、自然に褒めることが相手の喜びにつながるりますから。

でも、たとえ正直な気持ちで褒めても、「褒め力欠乏症」なら、結果はうまくいかないでしょうね。