本連載では、ビジネス文章力を向上させたい方のために、筆者がこれまで実務の現場で部下や後輩に教えてきたケースを紹介しながら、さまざまな文章スキル不足を「病」にたとえ、それを治療するというコンセプトで、スキルアップの具体的方法について解説します。

 第2回の治療は「トラブル報告力欠乏症」の治療です。仕事をやっていれば、大小いろいろな問題が発生します。このような緊急時に、上司、上長や関係者に適切な説明ができないと「ダメ」と評価され、重度仕事力欠如疾患となってしまいます。今日の患者さんは、そんな状況だったのです。

◆岡田ケイ子さん(仮名 23歳女性)の症状◆


芦屋:では次の方、岡田ケイ子さんですね。今日はどうされましたか。

岡田:はい、私は入社して1年ちょっとなんですが、いつも仕事でトラブルが発生すると憂鬱になるんです。文章が下手で、上司がいつも怒ってしまいます。上長も冷たいし、顧客からも冷たい態度を取られるし……。もう、どうしていいか、まったく分かりません。とにかく、ダメなんです!

芦屋:岡田さん、ちょっと落ち着いてください。パニック症候群気味ですね。落ち着いてもっと具体的に説明いただけますか。当院は患者さんの会社や個人の情報の秘密保持は間違いないですから、何がどうなって、何が問題なのか順を追って説明してください。

岡田:仕事で、お客様から苦情を頂いたり、急に商品に不具合がでてトラブルになるときがありますよね。その場合、急いで上司、上長、関係者に報告するじゃないですか。すると、上司や同僚や会社の他の部門から「さっぱりわからない」といわれちゃうんですよ。

そんなことが何回もあって、もう憂鬱で。会社にいけなくなりそうなんです。先生、どう思います?

芦屋:いや、それは診てみないと。では、早速検査をしてみましょう。文章はお持ちですよね。守秘義務がありますから、心配しないで診せてください。

岡田:これです。診てください。

芦屋:これは、お客さまからのクレームを社内の関係者に説明したメールですね。

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件名:宮崎商事様のトラブル報告について
技術部 沖課長殿

お疲れ様です。営業部 岡田です。

 先日納品しましたPCについて、お客様からクレームがきました。フロアに導入したマシンにソフトをインストールしても、一部のマシンで動かないということでした。会社で検証しましたが、再現しません。何か、PCの設定かバグとかだと思うのですが。

どのようにしたらよろしいでしょうか。どうぞよろしくお願い申し上げます。