ソーシャルメディアについて、「これは自分たちのビジネスモデルの根本を変えるゲームチェンジャーになる」と最初に考えたのはeコマース(電子商取引)事業者でした。ソーシャルメディアとeコマースを組み合わせた“ソーシャルコマース”という言葉も生まれましたがこの言葉を聞くと2008年に北米で立ち上がり2年後に日本に上陸したGroupon(グルーポン)を思い出す人も多いでしょう。

 その後、FacebookをはじめSNS上でのソーシャルコマースに挑戦した企業はたくさんあります。しかしeコマース事業者の期待と不安を実現した成功例はほとんど現れていません。この事実をもって“ソーシャルコマースは机上の空論だった”と断ずる人さえいます。

 しかし企業が認識するよりも早く、生活者に深く浸透するソーシャルメディアは、“現在の状況”がこれからも続くことを許してくれません。今回は“モノを買う、売る”という企業活動の基本に、変化を繰り返しながら影響を及ぼし続けるソーシャルメディアの中の「ソーシャルコマースの可能性」を解説します。

“進む楽天”と“挑むヤフー”

 ヤフーが2013年10月、“eコマース革命”としてショッピングモールの手数料無料化を発表してから、eコマースで日本一の規模と売上を誇る楽天と追うヤフーの動向が注目されています。

 ヤフーの2013年度第3四半期(2013年10月~12月)の決算によると、無料化によって同社は創業以来の減益となりました。しかし、その一方でストアの出店数や取扱商品数は増加し、減少が続いてきたショッピング関連の取扱高は回復傾向に向かっていました。

 わずか半年もたたないうちにヤフー内の店舗数は約1万店増え、約2万9000になりました。楽天の約4万2000店との差はまだ大きいですが、ショッピングモールの活性化という意味では大きな成果をあげています。