ソーシャルメディアが企業のマーケティング活動などで使われ始めてから、その課題が「ネガティブな発言への対応」と「効果測定」であることを前回述べた。「ネガティブな発言への対応」に関しては、対応策の有無やリソースの確保など、多くの課題が手付かずの状態になっていることについても解説した。

 では「効果測定」は現状、どこまで来ているのだろうか。この課題をソーシャルメディア分析ツールを切り口に考えてみよう。

 ソーシャルメディアのデータ分析ソリューションを提供している米国NetBaseが2014年2月に公開した調査によると、米国内でソーシャルメディアに関する何らかのツールを導入している企業は約60%に上るという。ツールを積極的に導入しているのは大企業よりも、年商2600万~5億ドル(約26億~500億円程度)といった中堅規模の企業のようだ。

 年商5億ドル(約500億円)以上の大企業では、ツールを利用する割合が減ってくる。恐らく企業規模が大きくなるほど、ソーシャルメディアに関連するタスクの大半を外注する場合が増えるからと考えられる。

 米国の場合、大企業の「ソーシャルメディアチーム」は、内部の担当者および外部のエージェンシーやベンダーなどを合わせて、10人から20人程度の構成でチームを組むケースが多い。その企業自身がソーシャルメディア分析ツールを活用していたとしても、エージェンシーやベンダーが導入しているツールを使うケースが多くなるようだ。

 ソーシャルメディア分析ツールを活用する目的は「キャンペーンの効果測定」が全体の60%を占めて最も高く、続いて「ブランドの評判分析」(48%)や「競合調査」(40%)が続く。分析ツールによって日常的にソーシャルメディア上の動きを把握できる環境は整うが、実際に使われるのは何らかのキャンペーンを実施したときであることが多い。ソーシャルメディアが、多くの企業では広告や販促ツールの一部であることをうかがい知れる。

 企業がソーシャルメディアの分析で得ようとしているものは「エンゲージメント」に関する情報が66%で最も多い。一方で「会話における自社製品やブランドの言及量」や「会話におけるポジ・ネガ」などは非常に少ない。

 このように米国ではソーシャルメディアの活用を、主に顧客とのエンゲージメントの構築や維持のために位置付けているケースが非常に多い。ただ米国と日本ではエンゲージメントという言葉について、若干解釈が異なるので注意すべきだろう。