SIerなどトラディショナルなITベンダーも、いよいよ“既存顧客”との関係の見直しに動かざるを得ない。既存顧客とはユーザー企業のことではない。IT部門のことである。

 強いIT部門とはこれまで通り付き合うにしても、大半のユーザー企業でIT部門は没落しつつある。そんな顧客と運命を共にすることはない。ユーザー企業の中に別の顧客を見つけることを急ぐとともに、IT部門に取って代わる策略を考えるべきときである。

 景気回復により今、ユーザー企業はIT投資を増やしつつある。ただ、以前のようにIT部門が全ての案件を仕切っているわけではない。確かに、ERP(統合基幹業務システム)など“基幹系システム”という名の間接業務の支援システムは昔も今もIT部門の管轄である。だから、ERP のバージョンアップに伴うアドオン(カスタマイズコード)の改修といった、ITベンダーにとってそれなりに美味しい仕事は、依然としてIT部門から発注される。

 ERPのアドオンの改修のような、ユーザー企業にとって全く付加価値を生まない仕事で儲けるのもいかがかとは思う。だが、これはユーザー企業がERP導入時に自らの意思でカスタマイズしまくった結果なので、ITベンダーは美味しく儲けさせてもらっても、まあ構わないだろう。