最近、情報サービス産業協会(JISA)の懇親会などITベンダーの経営トップらが集まる場に出てみると、ITベンダーの経営が完全に弛緩しているのがよく分かる。

 アベノミクスによる景気回復に加え、みずほ銀行や郵政のシステム移行、マイナンバーに絡むシステム導入などが集中する「2015年問題」を控えているので、当分は人月商売に困らない。少し前まで叫んでいた「ビジネスモデルの変革」はすっかり過去の話。経営トップは皆、満面の笑みである。

 だが、弛緩しきっていて本当に大丈夫か。実際、大手SIerの経営者に会うと「SI料金が思ったほど上がらない」とのボヤキ節を聞かされることが多くなった。

 引き合いが増えてきているのに、SI料金の人月単価の引き上げにつながらない。下請けへの外注単価は容赦なく上がっているのにどうして、というわけだ。IT投資が戻ってきているときの“要件バブル”や“引き合いバブル”などの影響も考えられるが、構造要因からSI料金の単価が全く上がらない可能性が高い。

 普通に考えれば下請けへの発注単価と同様、ユーザー企業からの受注単価も需給関係を反映して上昇してもおかしくない。なぜSIerがユーザー企業から受注する料金の単価が上がらないのか。その理由はこうだ。