元ソニーのCIO(最高情報責任者)で、現在ガートナー ジャパンのエグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏は、システム部門がフロントオフィスに出ていく以上、「“失敗”が許される文化」を受け入れる組織的な準備が必要だと語る。


 前回は成長の第3フェーズにおいて、システム部門はシステム稼働後の「投資に対するリターン(成果)」にまで責任を持たなければならないという話をした。システム部門が従来のバックオフィスの仕事にとどまらず、企業の売り上げや利益に直結したり、顧客接点になったりするフロントオフィスで働くつもりであるなら、投資に対するリターンに責任を持つのは当然のことだと考えられるからだ。

 そのうえで改めて強調したいことがある。システム部門で働く人たちは、これまでのものの考え方や価値基準、行動指針を大きく変えていかなければならないということだ。投資に対するリターンに責任を持つのもその一つである。

 システム部門が企業のビジネス領域により深く関わっていくのであれば、今までとは働き方を変えなければいけない。受け身の姿勢は通用しない。

 これまでのシステム部門は、事業部門が考えた「やりたいこと」に対して、最適なITソリューションや効率的なプロセスを提供することで関わっていくことが多かった。しかし、これからはデジタライゼーションの時代を生き抜くために、自分たちが「何をすべきか」を自ら考えて社内に積極的に提示していくことが求められる。

 他の誰かが考えた「やりたいこと」に対して、最適化や標準化、効率化の解を提供するのとは、仕事の中身が大きく違ってくる。

 それはつまり、システム部門の価値基準や行動指針が劇的に変わることを意味する。