社長に代表されるITの“非専門家”と、ITのプロフェッショナルはどう対話したらよいか。それを考えるための材料を提供してきた本特集も5回目である。これまで以下のようなテーマを考えてきた。

 5回目の今回は基本的な話として「なぜITに投資するのか?」という問いを考えてみたい。

IT(情報技術)は本当に金がかかる。よその社長はIT投資をどう判断しているのかね。

 あなたが所属する企業や組織の社長や責任者、あるいは取引先の企業の社長から、こう聞かれたらどう答えればよいだろうか。

 あなたが一般企業に所属し、情報システムの企画や調達、運用を担当している場合、社長が「よその社長」の考えについて部下のあなたに聞いてくることはあまりないかもしれないが、要は「よそはどうやっているのか」「もっと安く済ませている会社があるのではないか」ということが知りたいのである。

 あなたがITを生業にしている企業に所属し、取引先に応対する責任者、つまり営業ないし技術の責任者である場合、取引先の社長と面談する際に、こういう質問を受けるかもしれない。例えば、あなたの会社が出した提案書やそこに記載された見積もり額を見て、相手の社長が「ITは金がかかるね」とつぶやき、「よそさんもこんなに払っているの」と冗談めかして聞く。やはり「もっと安くあげている会社があるのではないか」ということが知りたいのである。

 多くの社長は「ITに金がかかる」と思っており、一見、関心がないように見える社長であっても案外、社長同士でIT投資に関する情報交換はしているものだ。ただし、納得が行く情報が得られないので、部下や取引先につい聞いてしまう。