パーソナルデータやビッグデータの活用と相まって、注目を集めているのが医療ITだ。病院や診療所に集まる患者の症状に関するデータをデジタル化して蓄積し、これを診療効率や治癒率の向上などに、結び付けていこうとしている。

 医療ITには、大きく分けて3つのフェーズがある。まずは病院のIT化。これは、患者の診療録である電子カルテシステムや、薬剤・注射などを発注するオーダリングシステム、CTなどで撮影した画像の保存・管理システムなどを指す。

 次が地域連携。病院と病院(病病連携)、病院と診療所(病診連携)をネットワークでつなぎ、相互に患者のカルテデータを閲覧できるようにする仕組み。診療所では対処できない症状の患者を、スムーズに大規模病院に紹介できる。逆に、大病院で手術を終え退院そた患者を、自宅近くのかかりつけの診療所で診察する際に、患者に関する手術時や入院時のケル手を閲覧できる。また、二重の投薬や検査を防げるといったメリットも指摘されている。

 NPO法人 長崎地域医療連携ネットワークシステム協議会が運営する「あじさいネットワーク」が有名。こちらは、電子カルテのデータをベースとし、診療所が病院にある電子カルテデータを参照する形の連携をしている。

 新潟県佐渡市の地域医療連携システム「さどひまわりネット」(運営主体は特定非営利活動法人 佐渡地域医療連携推進協議会)は、電子カルテではなく、医療機関が健康保険組合や市町村に対し、診療内容や処方薬に応じた費用を請求する明細書であるレセプトのデータを基にしている。データを標準化してデータセンターに置き、相互に閲覧できる形になっている。病院と診療所だけでなく、歯科医院、介護施設もネットワーク化に成功。医療と介護が連携し、地域で包括的なケアを実現する「地域包括ケア」を実現している。

 最後が遠隔医療。こちらは、テレメディシンともよばれる。主目的は、ITを使って医療過疎地をなくしていこうとするもの。異なる場所にいる医師と患者とで、ライブでインタラクティブなやり取りができ、まるで同じ部屋にいるかのような診察が可能になる(関連記事:テレメディシン(遠隔医療)には、医療に対するアクセスポイントを増やす機能がある )。

 このほかにも、ヘルスケア面での管理ソリューションとしての利用がある。自宅にいる患者などとコミュニケーションをとって、健康に関するアドバイスを送る。また、医学教育での利用も考えられる。限られた専門家の高度な知識や経験を、より効率的により広範囲に活用するもの。遠隔地でも、著名な学者の講義を聴いたり、外科医の手術の様子を見学したりできる。