ツールはアナログながらデータ思考で顧客を攻略するのが、ヤマト運輸日本橋横山町センター(東京・中央)の柴田義和センター長。

 日本橋横山町センターの担当エリアは古くから衣類の街として知られる。800メートル四方のエリアには約600社の衣料品卸がひしめく。衣料品物流に特化した運送会社が幅を利かせるなか、柴田センター長は着任以来2年半で顧客数を2倍に増やした。その武器が、データを駆使した営業スタイルだ。

 まずは衣料業界の専門誌や論文などを読み込み、業界全体を把握した。全体としては縮小傾向にある衣料市場にあって、伸びる分野はどこか、物流も含めた業務の流れはどうなっているかなどをつかんだ。

 次にターゲットとする会社を選び出し、ヒアリングに向かった。荷物を預かる出荷業務でのシェアは低いものの、荷物を届ける配送業務ではほとんどの企業と接点がある。セールスドライバーと相談しながら、荷物量が多く商談になりそうな企業をピックアップ。「100社程度を選び、8人のセールスドライバーが約10社ずつヒアリングに行くことにした」と柴田センター長。自身も、新任のあいさつを兼ねて顧客候補を回った。

 ヒアリングの内容は、現在取引がある運送会社の扱い個数や条件だけではない。仕入れ先や出荷先、海外から仕入れる商品の通関プロセスやスケジュール。あらかじめ聞くべき項目をリストアップし、短時間に手際よく聞いていく。手書きメモというアナログなツールを使いつつ、聞きとるデータは標準化されているのだ。

 輸入工程にさかのぼってプロセス全体を把握するのには理由がある。ヤマト運輸には輸入や梱包、決済などの業務をそれぞれ専門に手掛けるグループ企業がある。これらの企業と連携しながら、顧客候補の悩みを解決する“ソリューション”を提供するためだ。グループ企業の担当者が定期的に集まるミーティングに参加し、ヒアリングを基に作戦を練る。

 ポイントになるのが顧客候補の「お困りごと」。ヒアリングで様々な質問をしていくうちに、相手の口から「…で困っているんだよね」という言葉が出てきたらチャンスだ。

写真●ヤマト運輸は客先でヒアリング
写真●ヤマト運輸は客先でヒアリング
写真:村田 和聡
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