今から6年後の2020年の日本社会──。東京での開催が決まったオリンピック関連の特需に企業は沸き、国民はアスリートたちが繰り広げる熱い戦いに手に汗を握る、そんな未来を想像できる。

 ICTの進化もオリンピックを背後で支えそうだ。スタジアムに設置されたスモールセル基地局が超大容量の無線通信を可能にし、競技を観戦しながら手元のスマートデバイスを使って決定的なシーンをプレイバックしたり、メガネ型端末を通して選手を見るとこれまでの競技戦績がAR(拡張現実)で表示されたりと、新たなユーザー体験がもたらされそうだ。

 ビッグデータの活用も、随所でオリンピックの運営を支えると予想できる。会場各所に設けられたセンサーデバイスが人の流れを先読みし、競技場の入り口が混雑しないように、来場者を誘導するといったシステムも実現されるだろう。各競技場を結ぶ交通機関も運転手が要らない自動化が進んでいそうだ。

 だが2020年の日本社会を想像すると、このような明るい話題ばかりではない。既に人口減少社会に突入している日本は、2020年に向けて労働人口の減少と高齢化の加速が一層進むことが確実だ。2020年にはこうした負のサイクルによる社会の軋みが、至る所で顕在化するだろう。

 日経コミュニケーションは今回、2020年の日本の姿を推測した。そこで出た結論が「ICTにおける4大変革が2020年の社会に過去に類のない大きな影響を及ぼす」ということだ。それは、多くの既存マーケットを侵食していくという未来につながる。その4大変革とは、「スマートデバイス」「スマートマシン」「ソーシャルパワー」「バーチャリゼーション(仮想化)」である(図1)。

図1●2020年、4大変革が既存マーケットを侵食する
図1●2020年、4大変革が既存マーケットを侵食する
「スマートデバイス」「スマートマシン」「ソーシャルパワー」「バーチャリゼーション(仮想化)」が過去に類のない大きな変化をもたらす。
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 いち早く変化に気づき、対策を取って動き出すプレーヤーがこの大変革を乗り越え、チャンスをつかみ取れる。一方で、座して待つだけの人にとっては過酷な未来が待っている。