多重下請けのピラミッド構造を前提とした現行のSI(システムインテグレーション)モデルは、もう限界点に達している。2015年問題は、急激な技術者不足とその後の人余りにより、この構造に属する業界の各社に大きな苦難を強いる。

 だが日本流のSIビジネスを構築する過程で日本のIT業界では、大手IT企業ですら営業利益率が6.7%と低く抑えられてしまった(図1)。最大手のNTTデータは2013年度上期に、SIの不採算案件のため250億円の損失を被った。一括受託を前提にIT企業がプロジェクト失敗のリスクを負うSIビジネスでは、そのリスクが大きな変動要因として効いてくる。各社はリスク管理と収益確保に向けた対策を打ち出しているが、元請けの企業ですら利益を出すのに苦心している。まして競合がひしめく2次請け、3次請けが利益を出すのはさらに困難になる。

日本と同じ受託主体の中国・インドに人材供給力で圧倒される
図1●日本のIT業界における重要指標を海外と比較
図1●日本のIT業界における重要指標を海外と比較
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 インドのIT企業は日本と同じく受託を収益の柱にしつつも、低コストかつ優秀なIT技術者に支えられ、営業利益率は27%と高い。大学の情報系学科卒業生数で、中国は日本の8倍以上。ある中小IT企業の経営者は「国内プログラマーの単価を高めようとしても、中国に流れる仕事がその分、増えるだけ」と明かす。日本のプログラマーの給与は、年を追うごとに中国のそれと近づいている。