須藤 亮 氏
1980年早稲田大学理工学部博士課程修了、東芝入社。2008年に執行役常務(研究開発センター所長)、11年に執行役専務(イノベーション推進本部長、技術統括グループ担当)。現在、取締役 代表執行役副社長としてヘルスケア事業グループや技術・イノベーション部、情報システム部などを担当。工学博士。
(写真:新関 雅士)

 当社の事業戦略は、もはやIT抜きには作れない。「機器・装置」と「IT」の位置づけが逆転したと感じている。

 これまでは、テレビやPCをどのように製造するか、あるいは、原子力や火力発電のプラントをいかに効率的に稼働させるかといった観点で、ITを活用してきた。つまり、機器や装置を主体にした事業戦略が先にあり、ITはその戦略を円滑に実現するための手段を提供していた。

 もはや、そのやり方は通用しない。機器や装置を主体に考えるのではなく、ソリューションから出発する。言い換えると、ITを起点に物事を考える必要がある。

 例えばテレビ。以前はテレビ番組を見るための機器だったが、今ではクラウドとの連携機能が重要になっている。4Kや8Kの映像が増えると情報量が膨大になり、高度なネットワークを構築する必要が出てくる。映像コンテンツだけでなく、住居のエネルギー消費状況や個人のヘルスケア関連情報も組み合わせて、テレビに表示することが求められるようにもなる。

 つまり、東芝がクラウドでどういう機能を提供できるかを考えないと、テレビは造れないのだ。

 医療でも、機器ではなくITが競争軸になってきた。CTではこれまで、撮影速度や画像の微細化といったスペックで、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や蘭フィリップス、独シーメンスなどと競ってきた。