クラウドを“お得に”使う勘所の二つめは、「必要なカスタマイズを見極める」ことだ。アプリ改修の必要性や難易度は、システム稼働後のコストに直結する。

カスタマイズに強いPaaS

 OS/ミドルウエアや開発環境を提供するPaaSや、アプリを提供するSaaSは、スクラッチに比べ開発コストの削減が見込める。電子メールなど、それ自体はビジネスの競争力にならず、システム変更が少ないものはSaaSが向く。一方、競争力を高めるために改善を繰り返すようなものはPaaSが適する。

 PaaSの一例が、米セールスフォース・ドットコムのプラットフォームサービスだ。セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長は、「基幹系のバックオフィスではなく、フロント系のCRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援)など、オンプレミスで成功例が少ない分野がターゲット」と話す。

 同社のサービスでは、「Sales Cloud(CRM)」や「Service Cloud(顧客サービス支援)」といった業務機能を提供する。カスタマイズに威力を発揮するのが開発プラットフォーム「Force.com」だ。Sales Cloudとの連携機能や、ユーザー管理/認証、セキュリティ機能などを提供し開発生産性を引き上げる。

ID課金のライセンス費用を抑える

 フィデアホールディングスのグループ会社である北都銀行では、「R-1」と呼ぶ法人営業支援システムを、Salesforce CRM上に展開している。北都銀行 営業店サポート部長の進藤勝実氏は「情報を蓄積、共有することで顧客とのリレーションを向上し、顧客ニーズをより深掘りしたかった」と狙いを話す。