「経営トップの指示でタブレットを導入したものの、従業員にほとんど使われず、約1年もの間、タブレットが“塩漬け”の状態に」─。タブレット導入にまつわるそんな手痛い経験をしたのが、「パリミキ」や「メガネの三城」などのブランドでメガネ店を展開する三城ホールディングスだ。

 同社は2010年に国内でiPadが発売されるや否や、社長の鶴の一声ですぐに社内導入を決定。全国約1000の販売店に合計1000台、1店に1台の割合でiPadを配布した。5000万円ほどの投資だ。

 しかし、冒頭に示したように、導入効果は上がらなかった。iPad活用のプロジェクトを主導する同社Digital Device Solutionsの河村和典氏はその要因について「当時は導入自体が目的になり、タブレットで何をしたいのか見えないまま進んでしまった」と述懐する(図1)。今でこそ、iPadを社内でフル活用している同社だが、当時は失敗パターンにはまった。

図1●三城ホールディングスが経験したタブレットの“塩漬け”状態
図1●三城ホールディングスが経験したタブレットの“塩漬け”状態
iPadを大量導入するも、社員にはほとんど使われず、一時は”塩漬け”の状態となった。2012年11月から自由度を高め、利用しやすい環境に改めた
[画像のクリックで拡大表示]

水面下で増える塩漬け端末

 この事例から透けて見えるのは、せっかく導入したタブレットを“塩漬け”に追い込む数々の落とし穴の存在だ。

 典型例が、目的が不明確なまま導入に踏み切ってしまうこと。「業務を改革できる強力な武器」とのポジティブなイメージが先行して経営陣から賛同を得やすいこともあり、タブレットの導入自体が目的と化してしまいやすい。

 セキュリティを必要以上に厳格にしてしまうのも、落とし穴の一つだ。三城ホールディングスの場合も、当初は情報漏洩を恐れるあまり、タブレットのセキュリティを厳格にし過ぎた。従業員がタブレットの業務利用を試したくても、アプリのインストールは全面禁止。また店舗に1台しかないため、誰のものなのか曖昧で従業員が手に取りにくい雰囲気だった。