ロジカルに物事を考える技術者にとって「第3のプラットフォーム」ほど納得感に乏しい“バズワード”はないかもしれない。クラウド、モバイル、ソーシャルメディア、ビッグデータを総称した言葉だが、なにせこの四つは技術的にレイヤーがそろっていない。「色あせてきた四つの言葉を強引に一つにまとめただけじゃないの」。ユーザー企業のIT部門からはそんな皮肉も聞こえてくるが、実はこれはとても怖い話なのだ。

 最近、IBMやオラクル、EMCなど外資系ベンダーは、その第3のプラットフォームへのシフトを鮮明にしている。各社の日本法人も「システムを徐々に第3のプラットフォームに移行させるのではなく、一度ガラガラポンしても移行を急ぐべきだ」(EMCジャパンの山野修社長)などと、ユーザー企業への働きかけを強めている。一見すると、外資系ITベンダーが得意とする“キーワード・マーケティング”でしかないようだが、今回はこれまでとは様相が少し異なる。

 第3のプラットフォームに対し、メインフレームが「第1のプラットフォーム」、クライアント/サーバーなどのオープン系システムを「第2のプラットフォーム」という。そして長年の激烈な生存競争を勝ち抜いた外資系ITベンダーは、第2のプラットフォームの覇者であり、それに関連するハードやソフト、サービスを最大の収益源とする。

 そうした外資系ITベンダーが一斉に、ユーザー企業を第3のプラットフォームに一気に移行させるマーケティングを強化し始めたわけだ。第3のプラットフォームには彼らが束になってもかなわないグーグルやアマゾン・ドット・コム、フェイスブックといった巨人が待ち構える。下手をすると顧客を奪われかねないが、それでも既存のITベンダーが移行を急ぐのは、米国での強烈なパラダイムシフトを“実感”しているからだ。