聞き手を納得させるには、筋の通ったストーリーを考える必要がある。多くのITエンジニアは、プレゼンテーションソフトで資料を作りながらストーリーを考えていくことが多いのではないだろうか。すべてのスライドにタイトルを付けて一通りの流れを作り、次いで、スライドで説明したい内容を書き込んでいくという方法だ。

写真1●リクルートテクノロジーズ
伊野本 憲浩さん

 ストーリーを考えながら同時に資料も作成できるため、一見すると作業効率が高いように思える。だが、この方法は、大まかな流れを考え、その順番を入れ替えながら全体のストーリーを作り上げていく試行錯誤の作業になる。「集中力を必要とするので、多機能なプレゼンテーションソフトを使うと、ついつい文字の装飾やアニメーションといった見栄えに意識が向いてしまう」とリクルートテクノロジーズの伊野本 憲浩さん(ITソリューション部 インフラソリューション 3グループ 写真1)は指摘する。

 そこで伊野本さんは、プレゼンテーションソフトを使ってストーリーを考えることをやめた。代わりに使い始めたものが付せん紙である。まずは話したいと思う内容を一言で表現し、それを付せん紙に書き出していく。この段階では、ストーリーのことは考えない。とにかく、話したい内容を片っ端からピックアップするのである。

 書き出した付せん紙をホワイトボードや窓ガラスなどに貼り付ける。こうすると、話したい内容の全体を俯瞰ふかんできる。ここで初めてストーリーの検討に着手する。

 全体を眺めながらどの順番で話すのかを考え、貼り付けた付せん紙を並び替えるのである。「アナログな手法だけど、これが本当に整理しやすい」と伊野本さんは強調する。