大企業とベンチャー企業を結びつけようとするイベントなどが活発化している。「アベノミクス」で日本経済の成長期待が高まる中、今一つその波に乗り切れていないと言われる多くの日本の大企業。こうした日本の大企業の活力を取り戻すために叫ばれている言葉が「オープンイノベーション」であり、その推進に当たってベンチャー企業が重要な役割を担うと期待されているからだ。

 2014年1月29日に開催された経済産業省主催の「新事業創出支援カンファレンス」では、大企業側がベンチャー企業に対して自社の取り組みをアピール。登壇した企業の1社であるNECで新規事業創出を担うビジネスイノベーション統括ユニットの澤田千尋理事兼事業イノベーション戦略本部長は、ベンチャー企業と組む意義について次のように語る。「自分たちだけで閉じた研究開発をしても、世の中の速い動きに追いつけない。特にICT業界は速い動きをする」。

 一方で、ベンチャー企業が優れた技術やビジネスモデルを持っていたとしても、それを実際に製品化したり、販売したりする際は、製品化のノウハウや製造・試験設備、さらには国内・国外に広がる販路を持った大企業は魅力的に映る。資金の出し手としての期待もある。

 お互いにメリットがあるように見える大企業とベンチャー企業だが、これまでは水と油のごとく、相容れない存在だと見られていたところも無きにしも非ずだ。ある20代のベンチャー企業経営者は、ある懇親会で大企業について「いい思いを持っていない」と率直に語る。「若い経営者だと真剣に取り合ってくれない感じがする。年齢ではなく、技術やビジネスモデルを見てほしい」と述べる。

 またある政府関係者はこんなことも言う。「ベンチャー企業の売上規模は、大企業の一部門の売り上げ規模より圧倒的に小さいことが多い。そうした数字だけで見て、ベンチャーをバカにする部長クラスの人がいまだに多い」。

 だがそんな状況も少しずつだが変わり始めている。政府によるベンチャー企業に対する投資環境の整備なども進み、大企業側でも真剣にベンチャー企業の活力、技術、アイデア、スピード感などを取り入れようと、以前よりも柔軟に間口を広げ、対話をし始めている。ベンチャー企業に飛び込む大企業出身者も増えており、お互いの良い点、悪い点を知る人も増えている。