2014年2月5日、横浜銀行のシステム運用を担当していた富士通フロンテックの元社員が逮捕されたとの報道があった。預金者の情報をもとに他行のキャッシュカードやクレジットカードを偽造。合計数千万円を引き出していたとされる。

 報道内容を整理すると、容疑者は2012年5月から13年10月まで48の口座から偽造カードで50回、計2400万円を引き出したという。川崎市内のATMから50万円を不正に引き出したことで13年11月30日にこの容疑者を窃盗の容疑で逮捕、発覚を防ぐためか、偽造されたのは横浜銀行以外の銀行カードだったようだ。

 それにしても、よく犯人を逮捕できたものだと思う。その経緯は今のところ報道からはくみ取れない。過去の不正出金時の監視カメラ画像から犯人の目星をつけていたところに、再び不正出金をしようとしてその場で逮捕されたのだろうか。もしくは不正出金された口座を調べ、関係者の犯行と目星をつけて逮捕にこぎつけたのだろうか。事件の全貌が明らかになるのはこれからだ。

 被害金額の2400万円はもちろん大金だが、この被害で済んだことは不幸中の幸いだ。2013年2月には世界27カ国でわずか10時間ほどのうちに、偽造カードを使って40億円が不正出金された事件があった。日本ではそのうちの約9億円が、わずか7時間ほどの間に都内の約220カ所のATMから出金されたという。これほどの筋金入りのプロではなく、個人の犯行だったことで被害額に差が出たのかもしれない。

「権限がある人の悪意を防ぐのは非常に難しい」

 この事件に関係して、横浜銀行からATMの保守管理業務を受託していた“元請け”のNTTデータ(写真1)と、容疑者が所属していた業務委託先(孫請け)である富士通フロンテック(写真2)がそれぞれ会見を開き、情報を開示している。

写真1●横浜市内で記者会見を開いたNTTデータ
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写真2●会見で謝罪する富士通フロンテック。中央は下島文明代表取締役社長
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