新機能はすぐにリリースし、利用者からのフィードバックを受けて改善する。このサイクルを数日単位で繰り返す消費者向けWebサービスでは当たり前の考え方を、会計ソフトに持ち込んだのが会計SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)「freee」を提供するフリーの佐々木大輔氏だ。

会計SaaS「freee」は会計ソフトとしては後発です。既存製品との差異化をどのように打ち出していきますか。

(写真:陶山 勉)

 大きな違いはクラウドサービスのみで提供していることです。クラウドのみの会計ソフトは、まだほとんどありません。

 二つめの違いは銀行やクレジットカードのデータを登録することで明細データをfreeeに同期させ、これに基づいて勘定科目を自動で付与する機能を提供していることです。この機能により、経理や簿記の知識がなくても試算表などが作れるということで「全自動の会計ソフト」と言っています。個人事業主や中小企業を対象に、青色申告から会社法に基づいた計算書類の作成までの機能を提供していますが、この機能がコアとなります。

カギとなる技術は何ですか。

 銀行やクレジットカードの明細データを分析して、勘定科目を推測するテキスト解析機能が特徴の一つです。

 この機能は自社で開発しています。会計という特定の分野で利用するため、チューニングが重要になるからです。既存の機械学習エンジンを使ったとしても、データを集めて、学習させるコストが発生します。既存製品を利用してもコストが発生するならば、現時点で最も良いと考えるアルゴリズムを利用して、自ら開発するのが自然な形だと考えました。

テキスト解析の精度は。

 クレジットカードの明細データの解析であれば80%くらいです。銀行の場合は全角カタカナのデータが多いため、解析が難しく、もう少し精度は落ちます。