前回の最後で、意思決定プロセスが「問題把握プロセス」「問題分析プロセス」「決定分析プロセス」「リスク分析プロセス」という四つのプロセスで構成されることを紹介しました。今回はこれらのうち「問題把握プロセス」について解説します。

 意思決定のプロセスは、「問題把握」を行うところから始まります。問題を解決するためには、まず何が起こっているのか、状況や内容を正しく把握しなければなりません。問題の大きさや緊急度を理解しなければ、適切な対策を打つことなどできないからです。

 問題を把握するには、情報を集める必要があります。このとき集めた情報の質がその後のプロセスの質を左右します。具体的に、問題把握プロセスは以下のステップで進めます。

STEP1 問題を5W1Hの視点で理解する
STEP2 最悪の事態を想定する
STEP3 最悪の事態を回避する方法を考える
STEP4 その方法によって新たな問題が生まないかを考える
STEP5 情報を伝達する

 以下、順番に見ていきましょう。

「六何の原則」に基づいて情報を集める

 まずはSTEP1の「問題を5W1Hの視点で理解する」からです。情報を収集する際は、以下に示す「5W1H」に分解して状況を理解するように努めると、思い込みを排除し見落としを防ぐことができます。場当たり的に情報を集めようとすると、抜け漏れが出やすく、断片的な理解にとどまりがちです。

  • What 何が起こっているのか
  • Who 誰が起こしているのか
  • When いつ起きたのか、いつ起きるのか
  • Where どこで起こっているのか
  • Why なぜ起きているのか
  • How どのように起こっているのか

 5W1Hは、別名『六何(ろっか)の原則』とも呼ばれます。日本における危機管理の第一人者であり、初代内閣安全保障室長を務めた佐々淳行氏は著書『危機管理のノウハウ』の中でこの六何の原則に基づいた情報収集の重要性を強調しています。