2014年2月5日、日本経済新聞朝刊の1面を「ソニー、パソコン売却へ」との見出しが飾った。同社のPC事業であるVAIOシリーズを、投資ファンドである日本産業パートナーズに売却する方向で検討しているとの報道だ。その4日前となる2月1日には、PC事業についてレノボ・グループとの提携交渉が進んでいるというNHKの報道をソニーが公式に否定するなど、VAIOシリーズの動向について注目が高まっている。

写真1●CES2014の基調講演に登壇したソニーCEOの平井一夫氏。PC事業から撤退するといった兆候は感じられなかった
写真1●CES2014の基調講演に登壇したソニーCEOの平井一夫氏。PC事業から撤退するといった兆候は感じられなかった
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 2014年1月に米国で開催されたCES2014で、ソニーはVAIOシリーズの新製品「VAIO Fit 11A」を発表している。筆者が取材した限りでは、PC事業を売却するという兆候は感じられなかった(写真1)。

 はたして今後VAIOシリーズはどうなるのか、ソニーを取り巻くPC市場の動向を中心に振り返ってみよう。

相次ぐ「VAIO売却」の報道

 2月5日の報道を受け、ソニーは「当社の発表によるものではありません」とするニュースリリースを公開した。しかし2月1日のレノボグループとの提携交渉についてコメントしたニュースリリースでは、「報道は事実ではありません」という表現を使っている。

 いずれのニュースリリースも、一見すると報道を否定する形をとっているものの、両者のトーンは大きく異なっている。日本産業パートナーズへの売却について、「当社の発表によるものではない」という表現は、報道の内容自体を直接的に否定するものではないからだ。

 ソニーの業績については、2014年1月27日に大手証券格付会社のムーディーズが同社の格付けを「Baa3」から投資適格を下回る「Ba1」(投機的格付け)に引き下げるなど、先行きに不安が広がっている。今後は2月6日にソニーが2013年度第3四半期の決算発表を予定しており、ニュースリリースで「さまざまな選択肢を検討している」としたPC事業について、何らかの発表を行う可能性もある。