2013年11月、アドビシステムズがデジタルマーケティングに関する実態調査を発表した。APAC地域における7の国と地域(中国、韓国、香港、シンガポール、インド、オーストラリア、日本)で、日本企業は「意識」「活用状況」「組織体制」「スキル」のいずれの指標においても、平均値を下回ったという。

 デジタルマーケティングとは、EC(電子商取引)やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、あるいはセンサーなどから得たデータを、マーケティング活動に生かす試みのこと。ビッグデータ活用の本命とも言える用途の一つだ。今後、企業のマーケティング施策の中で重きをなしていくと思われる。

 こうしたデジタルマーケティングの波に、日本企業として出遅れるわけにはいかない。しかし、その推進体制をいかに構築するかに頭を悩ませている企業は多い。デジタルマーケティング施策に積極的にのぞむ企業は、どんな体制を採っているのか。サッポロビール、タワーレコード、セゾン自動車火災保険、HON――。先行4社の事例を紹介しよう。

デジタル担当者を集約

 サッポロビールは2013年3月、デジタルマーケティング室を新設した。WebやSNSを使って、企業や商品のブランド認知の向上やECの売上促進、O2O(オンライン・ツー・オフライン)施策の実行などを担う。

写真1●サッポロビールの工藤光孝営業本部企画推進部デジタルマーケティング室室長
写真1●サッポロビールの工藤光孝営業本部企画推進部デジタルマーケティング室室長
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 デジタルマーケティング室という専門部隊を設立した狙いを、「デジタル領域に関する社内の知見を集約することにある」と、工藤光孝営業本部企画推進部デジタルマーケティング室室長は説明する(写真1)

 サッポロビールのデジタル施策は従来、社内の複数部署が担当していた。企業ホームページは宣伝室、コミュニティサイト「北海道Likers」やソーシャルメディア上でユーザーと商品開発に取り組む「百人ビール・ラボ」といった施策は経営戦略部、ECは新価値開発部といった具合だ。