会社への信頼感はみんなの行動を変える。姑息なこと、卑屈なこと、自分さえよければいいという格好悪いことをしなくなった。「私は今日5人のお客様を感動させたぞ」と家族に言える方が格好いいと分かってきたからだ。

 言い方を変えれば、社会の中で自分たちの有り様をそれぞれの立ち位置で考えるようになってきている、ということだ。

“会社が良くなる”生き方の美学

 毛利春夫専務(当時、現在は副社長)は「男たるもの紳士でなくてはならない」「人間たるもの」「上に立つ人間たるもの」こうだろう、と事あるごとに言っている。男性メンバーは皆、九州男児、人からあこがれられる男になりたい、と本気で思うようになっている。

 生き方の美学を経営者が説く。経営者を本当に尊敬していなかったら、単なるきれい事にしかならないのだが、カローラ大分では社員がその美学を共感できる行動規範として共有するようになってきている。

 「紳士であれ」の中身は、例えば男性社員もごみの分別をしたり、使った部屋の後片付けをしたりすること。前は、空のペットボトルが冷蔵庫に入っていても何とも感じなかった。女性社員にとっては、これが一番頭にくるらしい。お互いを思いやって手伝うことも大事、と毛利専務は言い続けている。

 なぜなら、これは彼の信念であり、人生観だからだ。男性社員も今では家でも食事の後に食器を下げるとか、体が自然に動くようになって、奥さんを感激させている。

 店舗を越えたオフサイトミーティングや自主的なプロジェクトを続けるのも、実は簡単ではない。現場から人が抜けることになるからだ。それでも冷たい目で見られない。お互いに助け合える関係ができているから、参加もしやすいのだ。

 営業担当者も、女子社員がオフサイトミーティングに参加して不在になる時のために、飲み物の作り方を覚えたり、器を下げたり、お客様応対の練習をしたりしている。一緒に手伝うようになったら、女性社員の不平不満が一気に無くなった。「無駄な電気を消せる男は格好いい」とサラリと言う人もいる。

 お互いに協力するのが当たり前の生き方、働き方をしていると、人生が良くなるし、組織が良くなる、家庭が良くなる。周りのことを意識するようになると「人のために風邪を引くまい」とまで思うようになる。