「最もセクシーな職業」とも言われるデータサイエンティスト。なぜセクシーなのかは統計学より難解だが、間違いなくIT分野で最も旬な職業だ。このデータサイエンティストの仕事が、SEの仕事に驚くほどよく似ている。そのことに気づかされたのは、著名なデータサイエンティストの一人である、大阪ガス 情報通信部ビジネスアナリシスセンターの河本薫所長に取材した時のことだ。河本氏からは「データサイエンティストとは何たるか」を聞いたが、話の内容はそのまま「SEの仕事とは」に通じるものだった。

 河本氏はデータサイエンティストの仕事を「見つける」「解く」「使わせる」の三つのプロセスに分ける。このうち、いわゆるデータ分析は「解く」のプロセスに相当する。その前段が「見つける」で、データ分析により解決できそうな課題を発見し、経営陣や事業部門に提案するプロセスだ。そして「使わせる」は、データ分析によって得られた解決策を、実際に経営陣や事業部門に実践してもらって課題解決を図るプロセスを言う。

 もうお気づきかと思うが、真ん中の「解く」を「作る」に変えて、「見つける」「作る」「使わせる」とすれば、SEの仕事のプロセスにそのまま当てはまる。つまりSEの場合は、ITによって解決できる課題を見つけてシステム化を提案し、実際にシステムを作り、そのシステムを意図通りに使ってもらえるように努力するわけだ。

 しかも興味深いことに、データサイエンティストの仕事として重要なのは「解く」よりも「見つける」と「使わせる」のほうだと河本氏は話す。“科学者”として状況を説明できるモデルを発見し、ビッグデータを宝の山に変えるという、花形の仕事のイメージからすると、「解く」こそメインの仕事と思いがちだ。ところが実際には、その上流や下流がもっと重要だというのだ。