IT業界と同じくマーケティング業界でも、毎年のようにバズワードが生まれます。多くは翌年には使われなくなりますが、中には定着していく“ホンモノ”も存在します。ここ数年、マーケティング担当者(広報担当者)の中で注目すべきキーワードとなっているのが“戦略PR”(PRはパブリックリレーションズ)です。

 前回までに紹介した「インタレストグラフ」と「コンテクスト」を踏まえて、今回はソーシャルメディアを活用するための具体的な方策の一つとして「パブリックリレーションズ」について解説していきます。

変人と先駆者・リーダーの違いはフォロワー

 新商品の発表をする際、多くの企業では報道発表用のリリースは広報担当者に渡し、広告原稿はマーケティング担当者と調整するのではないでしょうか。メディア(主にマスコミ)に“掲載してもらうための記者対応”は広報部門、“広告費を使ってメディアを利用する”プロモーションはマーケティング部門という切り分けをしている企業が一般的です。広報とマーケティングは“まったく別の仕事”という考え方は、企業規模が大きくなるほど強くなってきます。

 これまではその認識は間違っていませんでした。間違っていたのかもしれませんが、課題にはなりませんでした。なぜならソーシャルメディアの普及前に「商品は広告で売れる」というマーケティングが成立したからです。

写真1●デレク・シヴァーズ氏が2010年にプレゼンテーションした「社会運動はどうやって起こすか」という3分間の映像
(URLはhttp://www.ted.com/talks/lang/ja/derek_sivers_how_to_start_a_movement.html)
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 その理屈を説明するために、「TED Talks」で音楽家でありプログラマーであり起業家でもあるデレク・シヴァーズ氏が2010年にプレゼンテーションした「社会運動はどうやって起こすか」という3分間の映像を参照してください(写真1、TEDは日本ではNHKで「スーパープレゼンテーション」という番組で放送されている)。

 シヴァーズ氏が紹介するビデオの中では、公園で突然一人の男性が裸踊りを始めます。やがて一人が一緒に踊り始め、さらにまた一人、また一人と踊り出します。最初に一緒に踊り始めた男性に追随者(フォロワー)がいなければ、男性はただの「変人」でした。しかし、たくさんのフォロワーを得ることで彼は踊りの「先駆者」であり「リーダー」となりました。社会運動(ムーブメント)を生み出すとき、重要なのは最初の一人に追随する二人目のフォロワーを大切にすることだとシヴァーズ氏は解説しました。