日本、そして海外を問わず、企業のマーケティング戦略を効果的かつ洗練された形で展開させるあたって、CMO(Chief Marketing Officer=最高マーケティング責任者)の存在は以前から重要なものと語られてきた。米国ではフォーチュン500(全米企業500社番付)企業の60%以上がCMO職を設けている。CMOはオンライン/オフラインを問わず全てのマーケティング活動の責任を負い、その戦略や施策を推進させている。

 一方でCMOは、非常に任期の短い役職であることも知られていた。数年前の調査によると、CMOの平均任期は約23カ月。つまり2年に満たないものとされていたようだ。マーケティング活動が、企業活動のうち収益面に深く関与することが多いため、現実の売上高で評価されるという背景があった。しかもCMOは、広告宣伝というコストのかかる活動の陣頭指揮を求められる。企業にとって思うような結果が出なかった場合、真っ先にその責任を追求される立場にあることも、平均任期の短さに拍車を掛けていた。

 ひとたび新しいCMOが着任すると、企業内の組織は大きく変化する。特に米国の場合、新CMOの着任に伴い、マーケティング部門の関連ポジションが、「総入替え」に近い状態になることが少なくない。CMOと一緒に、部下までまとめて移籍する事態が起こるのだ。

 これは着任したCMOが、一刻も早く結果を出すため、パフォーマンスを把握でき、かつ気心の知れた部下を積極的に登用する傾向にあるからだ。言い換えればCMOには、新しい職場で新しい部下の適性や人間性を見極めながら、徐々に人間関係まで含めて構築し組織を作り上げていく時間すら与えられていないと解釈できる。